高周波回路入門メモ

今月のトラ技は無線特集をやってる。僕も少し前に無線に入門しようとしたことがあったのだが、どうも理解ができずに挫折してしまった。この際、再度入門に挑戦してみる。

無線の世界(RFワールドというらしい)には、高周波回路がつきもので、高周波回路には特性インピーダンスがつきものなのだが、どうもこの特性インピーダンスなるものが分からなかった。そこで、自分なりに調べたのでまとめておく。この記事の内容は僕の推測によるものが大きく、トンチンカンな事を書いているかもしれないと、はじめに断っておく。間違いなどがあれば、是非指摘してほしい。

分布定数回路

集中定数回路や分布定数回路の説明は以下のサイトがわかりやすい。

http://www.hapis.k.u-tokyo.ac.jp/public/makino/materials/20071211_CharacteristicImpedance.pdf

http://www.kawakawa.net/note/about_zo/about_zo.html

f:id:babyron64:20171117192253g:plain http://www.kawakawa.net/note/about_zo/about_zo.html

上の回路図を見てほしい。全ての回路定数にdxが付いている。これがどういうことかというと、伝達路のごく短い長さにおける振る舞いを調べているのだ。そして、それを足し合わせる事で伝達路全体の挙動をみようとしている。ここで引っかかるのは、単純に足し合わせるだけで伝達路全体の挙動が求まるのかという事だ。例えば、抵抗が接続されている回路を二つ足し合わせた時、抵抗値は二倍になるとは限らず、二つの抵抗が並列になるように足し合わせると、抵抗値は1/2になってしまう。しかし、この場合は大丈夫だ。というのも、直列部はインピーダンス、並列部はアドミタンスを考えている。そして、直列部のインピーダンスの足し合わせをしてもよく、並列部のアドミタンスも足し合わせて良いから、足し合わせたとしても問題ないのだ。ちなみに、上の回路図で示されている文字定数を用いると、直列部はインピーダンスを、並列部はアドミタンスを足し合わせた時に、それぞれがちょうどdxで括れるようになっている。うまいこと考えたものだ。

高周波回路については、様々なサイトで色々な説明がされてる。しかし、そんな理論よりも大事なことは、高周波・低周波によらず、回路の挙動はマックスウェル方程式を満たす*1ことだ。つまり、集中定数回路であれ分布定数回路であれ、実際の動作の近似だ。集中定数回路のほうがより荒い近似であり、高周波になるとその近似が適用できなくなるために、より精度を上げた近似回路である分布定数回路をモデルとして採用する。

例えば、よくある豆電球に電池をつなぐ実験を高周波の作法で考えることもできる。導線を電池に繋いだ後のごく短い時間は、豆電球の抵抗値にかかわらず流れる電流は一定だ。しかし、一瞬のうちに豆電球で反射した電流が帰ってきて、電池近傍での電圧による電流の発生*2に影響を与え始める。次の瞬間には色々と釣り合って、流れる電流は一定になる(結構ごまかした)。

一般的なインピーダンス

インピーダンスが変化している場所では電流が反射する。そのような場合、入射波と反射波が重なり合って、定在波(≒定常波)*3が生じる。一般に、振動数が等しい正弦波同士の足し算は、振幅が正弦的に変化する正弦波になるので、定在波の振幅は場所によって異なる。

インピーダンスは、一般にI / Vなので、

電圧によってどれだけ電流が生じるか

を表している。また、磁場の単位は[H = A / m]であり、電場の単位は[V / m]なので、インピーダンスはより一般的に

電場によって磁場がどのような影響を受けるか

を表していると考えられる。

特性インピーダンス

特性インピーダンスは、無限長の伝達路に電源を接続した時の電圧と電流の関係を表している。たぶんだが、電場の変化は変化の起点から遠ざかるにつれて減少していくので、その減少割合を特性インピーダンスで表しているのだろう。そして、電場の変化を減少させる要因こそが、電流(荷電粒子の移動)なのだろう。実際、コンデンサーを放電するときには、電流が流れることによって極板間電圧が小さくなっていくわけだし。。。つまり、特性インピーダンスは、「電圧と電流の関係を表している」<=>「電場の変化の距離に対する減少割合を表している」(たぶん)。

抵抗とインピーダンス(参考)

基本的な回路素子に、抵抗がある。これの単位は[Ω]でインピーダンスの単位と同じなのだが、これはどういうわけだろう。抵抗は電流の流れを妨げるものだ。僕らが、(狭い意味での)電流が流れているという時、実際には電子が流れている。電子は導線の中を流れるわけだが、当然そこには原子があり、電子の動きを邪魔する。それが、抵抗の原理であり、だからこそ抵抗は、抵抗率を用いて、

R = ρd/S

と表せる。これは特性インピーダンスが存在する理由とは異なる(と思う)が、結局のところ、電圧が印加された時に流れる電流の量を減らす効果があることに変わりはない。よって、抵抗と特性インピーダンスはともに、広い意味でのインピーダンスに含まれる。

電流の反射

インピーダンスを、「電場によって磁場がどのような影響を受けるか」を表すものと考えると、インピーダンスは電場と磁場の相互関係を表すものであると言える。すると、電流の反射は光の反射と同じようなものだと思えてくる(僕の推測)。

電磁波の反射と電流の反射を同じように見れることの理由をもう一つあげる。電線に電圧を印加した時、それによる電場の変化は電線に沿って波として伝わっていく。そして、それによって生じた電流が磁場に影響する。これは、まさに電磁波と同じようなものではないか。電線に沿って、電磁波が伝播していっているのだ。そして、電線の性質(特性インピーダンス)が変化したところで電流が反射するのは、媒質の性質(屈折率?)が変化したところで電磁波が反射するのと同じだ。当然、特性インピーダンス[Ω]と屈折率[1]*4は単位が違うが。

そして、インピーダンスが変化する場所で電流が反射するのなら、終端部に特性インピーダンスと同じ大きさの抵抗をつけておけば、終端部での反射を防ぐことができる。これが、通信路などにおけるターミナルの役目(の一つ)だ。終端部で反射が起きると、入射波の波形が乱れてしまい、情報を正確に伝達できない。

一方で、終端部を開放すると電流が反射する事を利用しているものに、アンテナがある。アンテナでは、入射波と反射波で定常波を作る事で、強い電磁波を出している。詳しくは、http://www.interq.or.jp/blue/rhf333/ANT-K.htm とかを参照。トラ技の特集記事(Amazon)も良いかも。

注釈

*1 : 「マックスウェル方程式に従う」という表現もよく見るし、それが間違っているとは思わない。実際に、回路の挙動がマックスウェル方程式に従っていると考えても矛盾は生じないからだ。しかし僕は、「実際の現象があって、マックスウェル方程式はそれに矛盾していない」と考える。つまり、マックスウェル方程式を、「実世界の一つの解釈である」と捉えている。そのため、「マックスウェル方程式を満たす」という書き方をした。この辺りは、科学哲学の領域なのかな。

*2 : 「電圧により電流が生じる」というと、電圧が原因で電流が結果であるように思える。しかし、電流が原因で電圧が生じると考えることもできる。実際、コンデンサの極板間電圧を考えて見ると、コンデンサに流れ込む電流によって極板間電圧は上昇する。このように、因果をどのようにでも取れてしまうのは、電圧や電流といったものが人為的なものであり、実世界の一つの解釈でしかないからだと僕は考えている。つまり、実世界で起きた一つの現象を、電圧を基準にして解釈するか、電流を基準にして解釈するかで、(みせかけの)因果の方向が決まるということだ。

*3 : 同じ意味のことが多いらしい。(参考:https://soudan1.biglobe.ne.jp/qa2068000.html

*4 : [1]は単位無しということ。